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お味噌のコラム「味噌日和」

日本人の食卓に欠かす事のできないお味噌。
それは日本の歴史や言語にも深い影響を与えています。
ここでは、お味噌を歴史や科学、文学などのジャンルから理解していくお話を更新していきます。

味噌とすり鉢とお味噌汁

子どもの頃に読んだ絵本に、お寺の小坊主がすり鉢で味噌をする絵があり、“味噌すり小坊主”と呼ばれていた事を記憶しています。
平安時代、味噌は食べ物につけたり、なめ味噌としてそのまま食べたり、貴族や地位の高い人が食べる貴重品でしたが、鎌倉時代になると武士も食べるようになり戦略食糧としても作られていました。
その頃、中国からすり鉢が伝わり、味噌をすって食べる習慣が広がりました。すった味噌に湯を加えた“味噌汁”が考え出され、戦場で重宝され英気を養う食となったようです。
室町時代にはすっかり一般に広がり、栄養バランスのとれた日本食の基本である“ご飯・味噌汁・おかず”というライフスタイルが出来ました。1977年に「合衆国の食事の目標」と題して発表されたマグガバン・レポートには元禄時代以前の日本の食事、和食こそが人類の理想食である、と書かれている事に納得しています。

災害と信州味噌

今年は阪神淡路大震災から20年目、東日本大震災から早や5年目を迎えます。地震や台風、火山の噴火災害、ゲリラ豪雨や竜巻、予想外の大雪など自然の猛威に直面しましたが、先人たちは過酷な被害を乗り越えてきました。
1923年(大正19)9月1日に発生した関東大震災も多くの被災をもたらしました。190万人が被災し、亡くなられた方や行方不明が10万5千人余、全焼が21万2千余棟など大災害でした。国内外から多くの救援物資が送られ、復興支援が進められました。
長野県からは信州味噌が送られ、甘すぎず辛すぎずという味が多くの被災者に喜ばれ、好かれる味噌として定着したそうです。信州味噌は米麹と大豆で造られる米味噌ですが、現在、生産・消費される日本の味噌の40%が信州味噌で、日本を代表する味噌となっています。ご飯、おかず、味噌汁は日本人の食事の基本ですが、味噌汁の香りは平穏・安寧の象徴に思えてなりません。

戦国武士と味噌汁

味噌は中国から朝鮮半島を経て日本に伝わりましたが、味噌汁は中国にも朝鮮にもなく、日本人の発明だといわれています。
1460年代、応仁の乱のとき兵食として考案され、古書「止戈類纂(しかるいさん)」に「焼き味噌は湯に溶かして呑めば、一日中ろくにものを食べなくても腹が減るということはない」と書かれています。
上杉勢と武田勢が戦った「川中島の戦い」は、天文22年(1553年)から11年間の長期にわたってくりかえし戦っていますが、両軍の将兵の体力を支えたのが味噌汁だったといわれています。
上杉は「越後味噌」で、武田は「陣屋味噌」で、両軍とも毎日味噌汁は飲み放題で大いに英気を養ったそうです。歴史の本には「関東武士が天下をとったのは、味噌汁のおかげ」とも書かれています。
戦国武士の知恵が後に一般にも広がって、「米飯、味噌汁」という日本の食事スタイルができたのです。

ちょっと味噌通になる話し

「味噌日和」のコラムを読まれたお客さまから、書きためられたお味噌の資料を沢山お届けいただきましたので、ちょっと“味噌通”になるお話を綴ってみました。
ご存知のように味噌は「発酵熟成」品ですが、味噌の「発酵」とは「酵母を初めとするさまざまな微生物が活動し、麹の出した酵素によって分解された大豆や米の成分から、味噌としての複雑な味や香り、成分などを総合的に作り出す自然の営みの一つといえます」と解説され、発酵のための種酵母は、その味噌に最適なものを選定して加えますともあります。一方「熟成」とは「それからさらに一つの食品としてまとまって(なれる)過程といえます」と整理して解説されています。その他にも味噌は、発酵型と分解型という二種類の分類が出来るなど、味噌の奥深さが書かれていますので、またご紹介いたします。発酵、熟成と聞いただけで味噌の香りを感じるのは、私だけでしょうか。

合わせ味噌って何?

「合わせ味噌ってどんな味噌ですか?」と尋ねられますので、お話しましょう。
みそづくり健康委員会の書には、合わせ味噌とは2〜3種類の味噌を混ぜて使うことと書かれています。もとは懐石料理から始まったそうですが、家族でも好みの味噌を複数揃えていれば、具材や季節に合わせていろいろ楽しめるのが合わせ味噌の特色です。
合わせ味噌のコツは、産地の遠く離れたもの同士が良いのだそうです。その理由は、産地が違うと原料や製法に差が生じ、味わいが違うからで、例えば『信州味噌(長野):御膳味噌(徳島)』では、やや酸味のあるさっぱりとした辛口のスタンダードな信州味噌と、どんな具材にもなじみやすい甘口の徳島産の御膳味噌とを合わせる事によって新しい“味噌味”を楽しめます。
他にも『加賀味噌:秋田味噌』や『長崎味噌:仙台味噌』など、甘口と辛口、赤色系と白色系など、好みに合わせてお楽しみください。

「なめ味噌」入門

日本の味噌造りは飛鳥時代(6世紀末)に朝鮮半島から渡来したそうですが、味噌という文字が現れたのは平安時代初期で、「噌」の文字は味噌以外の用法がなく日本で作られたものであり、味噌が日本独自の食品である証拠だともいわれています。
噌」には“にぎやか”という意味がありますから、さしずめ味噌は“にぎやかな味を持ったもの”ということでしょうか。
最初に登場する味噌は、そのまま舐めておかずにする「なめ味噌」。その後、飲む味噌に変わっていきます。
では、にぎやかな「なめ味噌」を列挙しますと、経山寺味噌、鯛味噌、もろみ味噌、鉄火味噌。さらに、ふきのとう味噌、かつお味噌、豚味噌、松前味噌、ホヤ味噌、はも味噌、山海味噌、そば味噌とキリがありません。
まさに“にぎやかな味を持ったもの”だと、わかる気がします。
なめ味噌の名前から、どんなおかず味噌なのか想像しながら香りたつ時間をお過ごしください。

徒然草でみつけた“味噌で酒を飲む”話

「つれづれなるままに、日暮らし、硯に向かいて心に移り行くよしなしごとを、そこはかとなく書きつくれば、怪しうこそ物狂ほしけれ」歌人で随筆家でもある吉田兼好「徒然草」の序文ですが、なぜか団塊世代の心境を重ねてしまいます。鎌倉末期から書かれた世間や日常生活を鮮やかに描いた随筆は244編に渡りますが、第215段に鎌倉時代の実力者として知られた北条時頼の話があります。時の実力者でも一人で酒を飲むのは寂しいとみえて、部下を呼び酒の相手をさせるのですが、酒の肴がなく台所にあった味噌をみつけ、天下の執権が味噌をなめながら酒を飲みご機嫌になったという話です。「徒然草」のおかげで北条時頼は、身分が高い人なのにおごることなく質素な暮らしをした立派な人だと評判を得たそうです。“焼き味噌と酒”の組み合せで、味も評判も上々ですね。

味噌賞賛

味噌日乗食通で知られる作家の池波正太郎さんは「梅安料理ごよみ」で、「味噌汁の香りを欠いた食卓は朝の食卓とはいえない。“手前味噌”ということばがあるぐらいで、味噌の好みは土地により家によりさまざまである」と書いています。
料理研究家で料理随筆家でもある辰巳芳子さんは「味覚日乗」で、味噌について「味噌という食べ物は、千変万化、多様性に富み、汲めどもつきぬ面白みを備えています。なぜなら第一に栄養源であり、調味料であり、香辛料であり、保存食でもあるからです」と表現されています。
食を通して人の心を見つめ、正しいものを食べることで仕上がってゆく人の幸を説かれる言葉に共感しながら、味噌への愛情を感じます。
今朝の味噌汁の味は格別です!

「味噌汁の宇宙」パートⅡ

1991年第105回の芥川賞を「背負い水」で受賞した荻野アンナさんは、慶応大学文学部教授でTVのコメンテイターとしても活躍されています。パリ第四大学(ソルボンヌ)で文学博士を取得し、フランス文学の研究家としても知られています。
1994年に書かれた「食べる女」に“味噌汁”に関する観察がありますので、ご紹介します。
「味噌のコクも、砂糖の甘みも、最初は自己主張しないのだ。自分は脇役と心得て、ひかえめに素材に寄り添っている。味噌汁の宇宙どんな味だい、はっきりおし、追うのが人情。追うほどに、深みにはまる。気がつけば味噌どぶどろの底なし沼である。沼に身をゆだねてたゆたう。なしくずしに溶けて流れていく味噌の濁流にひそむ、すりつぶされた豆の残滓。手ざわりのよい闇の奥から不透明な光が浮き上がってくる。…味噌汁の鍋の底から外の世界をうかがうと、こんな感じだろうか。」
ハロルド・マギーの「味噌汁の宇宙」を読む思いです。

横文字になる味噌

「和食」がユネスコの無形文化遺産に登録されてから、日本の調味料が一段と注目されています。
味噌と世界今年の春、全国商工会連合会がニューヨーク・マンハッタンの中心で開いた日本の伝統的な食材150種を集めた催しは大変な人気で、調理実演では味噌に生クリームを加えソース状にしたものなど、アメリカの人々にも受け入れやすいよう工夫を凝らした料理がふるまわれました。試食した人からは「とてもおいしい」「食材に塗って食べるなど自宅で味噌料理に挑戦したい」など高い評価を受けたそうです。
同じように西海岸で開かれた日本の調味料の展示会も、大好評だったそうです。醤油はソイソースとして定着していますが、味噌は2005年あたりから輸出が増え始め、輸出第1位はアメリカ、2位は韓国、3位はカナダで、オランダやイギリス、ドイツなどにも広がっています。「MISO(味噌)」や「DASHI(出汁)」、「UMAMI(旨味)」という言葉も広がりそうです。

モーツァルトを聴きながら

モーツァルトの曲が癒しや脳の活性化、胎教に良いとした「モーツァルト効果」は、カリフォルニア大学の心理学者フランシス・ラウシャーが行った実験がネイチャー誌に発表された事で、広く知られるようになりました。
日本でもモーツァルトの曲を聞きながら仕事をすると作業効率が上がり、ミスが大幅に減少したとの報告もあります。音楽と味噌また、国内の味噌蔵や酒蔵でもモーツァルトを聞かせて、発酵・醸造させ、まろやかで美味しいお味噌や酒造りに活用しているところもあるそうです。
鳥取県のバラ農園ではビニールハウスの中で聞かせて、丈夫で長持ちする花を作ったり、イチゴ農園では大きな甘いイチゴが実るそうです。鹿児島県では伝統的な鰹節「木枯節(かれぶし)」の青カビにモーツァルトを聞かせると、細かいカビが全体につき良い「木枯節」ができるそうです。
人の耳では聞き取れない1/fという周波数の微妙な揺らぎの効果とも言われていますが、自身の曲がこうした用途に使われて、モーツァルトは驚いているでしょうね。

※このコラムは、実際の効果を証明するものではありません。

“お袋の味”とお味噌汁

お味噌の輸出が増えるのは喜ばしいが、国内需要の低迷と聞くと少し寂しい。
“お袋の味”も少なくなるのではと気になります。その“お袋の味”ランキングでは、味噌汁は2位で1位は肉じゃがだそうです。以下、炊き込みご飯、きんぴらごぼう、卵焼き、かぼちゃの煮付け、さばの味噌煮、から揚げ、切干し大根と続きます。

この“お袋の味”の名付け親は、TVの料理番組で活躍された土井勝さんで「食べ慣れた母の味で、実家を離れて生活する人には恋しい味」をとらえての表現だそうです。お袋の味とお味噌汁鎌倉市の小学校5年生の家庭科の授業に“ご飯と味噌汁”を作る課程があって、専門家の調理師の指導を受けながら実際に作ってみるそうです。和食がユネスコの無形文化遺産に登録され、今またこうして味噌汁も受け継がれ、誰かの“お袋の味”となっていく事を思うと、嬉しさを感じます。朝の目覚めは、やはり一杯の味噌汁からですね。