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お味噌のコラム「味噌日和」

日本人の食卓に欠かす事のできないお味噌。
それは日本の歴史や言語にも深い影響を与えています。
ここでは、お味噌を歴史や科学、文学などのジャンルから理解していくお話を更新していきます。

「みそ汁」の切手

昨年イタリア、ミラノで開催された食をテーマにした「国際博覧会」は、半年の総来場者2,150万人で人気の日本館には入場待ちの長い列ができるほどで228万人が訪れました。味噌汁切手 和食の世界遺産もあり、昨年11月の和食の日に「和の食文化」切手シリーズ第1集が発売されました。82円切手10枚シートで“一汁三菜”がテーマですが、栗ごはん、鮭の塩焼き、筑前煮、青菜のおひたし、みそ汁、たくあんと梅干、てんぷら、白米と奈良漬、ひじきの煮物とみそ汁、あじの干物、五目ごはんとぬか漬、けんちん汁、かぼちゃの煮物と冷ややっこなど、これぞ和食の献立が懐かしい丸いちゃぶだいの上にのせられたミニチュアを撮影した美しい切手です。
みそ汁が2つとけんちん汁が取り上げられ、ちょっと自慢したくなる切手です。デザイン先進国フィンランドには椅子や食器、テーブルウェアや衣服などのデザイナーズ切手があり、日本も仲間入りした嬉しさを感じます。

お味噌と土の「天地返し」

味噌は発酵工程の途中で上下をかき混ぜて酵素に触れさせ、均一にしますがこれを「天地返し」といいます。味噌の発酵酵母は、基本的に嫌気性の微生物ですが活性が鈍ってくるのを防ぐために天地返しをして酵素に触れさせ、再び活性化して発酵するようにします。
大豆、米、塩を混合して仕込みますが、発酵のムラを均一にする役割と美味しい味噌づくりの知恵が天地返しです。
天地返し 話しが変りますが、神奈川県の秦野市で土の「天地返し」の遺跡が見つかったというニュースがありました。これは1707(宝永4)年に富士山が噴火し、その時に降り積もった火山灰を農民が苦労して取り除き復興作業をした遺構が見つかりました。火山灰が45cmもの厚さで積り田畑野山一面砂場と古文書にあります。
その遺跡が横野山王原遺跡で発掘されましたが、天地返しをすると保水力が落ち、そこで選ばれた作物が今の秦野の名産、落花生と葉タバコです。先人の知恵はすごいですね。

発見!「おくすり味噌汁」の本

「おくすり味噌汁114」―こんなタイトルの本を見つけました。著者はNHK、TVや書籍・雑誌で活躍される大友育美さんです。
“その日の体調に合わせて食べたい具だくさん味噌汁”とあり、嬉しいのは体や健康づくりに合せて目次が作られていることです。
世界と味噌汁「体を温める味噌汁」から始まり「エネルギーを補う」「体の巡りをよくする」「デトックス」「消化を助ける」「体をうるおす」「熱を冷ます」「心に効く」と味噌汁を区分し、5種類の味噌を使い味噌汁に入れる具を“おくすり食材紹介”と解説しながら、薬効やレシピを紹介しています。体を温める味噌汁では、ネギやしょうが、人参や玉ねぎ、にんにく、鶏のささみなどの具の効能についても書き込んであります。冷えや疲れ、むくみや胃もたれ、イライラや二日酔いにどんな味噌汁が良いか114種類ものレシピを紹介。作る手間も5分程で完成と嬉しくなる一冊です。 四季を通して楽しめる“味噌汁百珍”です。

「おくすり味噌汁114」:大友育美著/ワニブックス発刊/定価900円+税


世界に広がる“お味噌の香り”

農水省の調べでは、和食が2013年ユネスコの世界無形文化遺産に選ばれたこともあって、日本食ブームで日本食店が’13年度の55,500店から ‘15年には約88,700店となり、2年で6割増となっていると発表しました。和食の健康的なイ メージで、寿しや刺し身が人気を集めていますが近年は豚骨味などの日本式ラーメン店が大きく伸びており、お味噌も欠かせない食材となっています。今年イタリア・ミラノで世界140ヵ国以上が参加して開かれた「食」をテーマにした万博でも日本館は人気で期間中200万人以上が来館したそうです。和食の調理実演やだしのとり方や酢飯の作り方教室も開かれ、多くの人が参加しています。
世界と味噌汁“味噌・醬油・だし”は、今や世界の食材、調味料として広がっています。農水省では日本食の「質」を上げるために、現地のシェフの研修や技能認定制度等にも取り組んでいくそうです。世界の食卓に味噌汁の香りが漂うのでしょうか。

作品の中の味噌汁

小津安二郎映画監督の作品には、ご飯に味噌汁という食卓風景がよく描かれますが、作家も小説の中にしばしば、味噌汁を書きます。
島崎藤村の「桜の実の熟する時」には、「耳の遠い、腰の曲がった青木の親戚のお波さんは夕飯を用意して捨吉を待受けていてくれた。味噌汁か何かの簡単な馳走でも、そこで味わうものは楽しかった。」と表現し、何か味噌汁に対する優しさを感じます。
小説と味噌汁徳川夢声の「夢声戦争日記抄・敗戦の記」には、「この頃の味噌汁は大いに美味しい。庭に青いものがあることも一つの因。富士子が惜しげもなく鰹節を使うせいもあり。」と味噌汁を褒めています。
荻野アンナの「食べる女」では、「海外の旅先でまず欲しくなる日本食は味噌汁、それも清らかな豆腐の白い輪郭だけ味噌のブラウンに染まって浮かぶ赤だしである。」と味噌の色で味を表現しています。
味噌汁はやっぱり“絵”になるのですね。

味噌は芸術だ

「味噌大学」を書かれた三角寛さんは“味噌づくりは芸術だ”と説いています。
音楽や絵や踊りを「芸術」と思っている人は不幸であり、食生活は自然の芸術としてすべての人が自然に行わねば、生きることができないと熱く語っています。
和歌少年の頃、母から教えられた歌がその原点で「うえつけの まこと たごめば そのすべは おのづとあぢに いきるものかや」。この和歌を漢字にすると「芸の誠手込めばその術は、自と味に生きるものかや」となりますが、味噌づくりも人に誠がなければだめで、そのすべがおのずと味になるのだと説いています。
味噌づくりにおいても「術」とはミソの法であり「術」を“おきて”“すじみち”“てだて”“ちえ”“はたらき”“わざ”であり、学問であり、技芸であると読みかえています。
「味噌づくりは芸術である」と説く、三角さんの味噌への深い愛情を感じます。

味噌の調理

“味噌”は万能の食材であり、調味料として世界に広がっていますが、味噌の調理法について整理してみました。

味噌いろいろ1)味噌で「煮る」…味噌煮込みや鍋料理、雑煮や味噌汁、おでんときりがありません。
2)味噌で「焼く」…朴葉の上に色々な具材と一緒に焼く、色々な食材に味噌をぬって焼く。山椒や唐辛子を入れるだけで味が変わる。
3)味噌で「炒める」…野菜や肉を味噌で炒めるだけで食がすすむ。酒のつまみにもなる。
4)味噌で「あえる」…食材次第で応用できる。相手は酢やマヨネーズ、梅肉と多様だ。
5)味噌で「揚げる」…味噌に色々な具材をいれて油で揚げる。味噌の天ぷらもある。
6)味噌で「漬ける」…味噌漬けと聞いただけで食欲が増すが、魚や肉、野菜とオリジナルの調理ができる。味噌に挟む、包む、混ぜるだけで「味噌たれ」や「なめ味噌」と広がります。改めて味噌の万能性を知り、食卓に欠かせないことがわかります。

「冥王星」のナゾと「味噌汁」

対流米航空宇宙局(NASA)の無人探査機「ニューホライズンズ」が9年半がかりで冥王星に接近し、地球から観測できなかった表面の詳しい地形の鮮明な画像を送ってきました。
ナゾが多かった冥王星の姿が明らかになり、なかでも巨大なハート型の地形が大きな話題になっています。このハートの正体は氷の平原らしく、ハートの中心から左右の模様が異なることから冥王星の核に熱源があり、その対流によって出来たのではと推測されています。
以前、このコラムで書きましたキッチンサイエンスの著者ハロルド・マギーが「みそ汁の粒子が中央に集まって小さな雲のようになり、ゆっくり形を変え、熱い液体が椀底から上昇し、表面の蒸発によって冷却、濃縮されて沈んでゆく」と書いた、味噌汁の対流理論がNASAの科学者たちによって熱く語られているのだそうです。冥王星のナゾが味噌汁の科学で解ければ、日々の味噌汁に深いロマンと愛しさを感じます。

「はなちゃんのみそ汁」に感動

5歳の時にお母さんを亡くした中学生の安武はなさん(12歳)の作文が小学2年生向け道徳教材に今年の春、載りました。
はなさんが小3の時に書いた「ママとの約束」という作文です。
はなちゃんとのみそ汁「私は、ママから教えてもらったみそ汁作りをがんばっています。みそ汁を作っているときはいつも、ママのことを思い出します。作っているときはママがとなりにいる感じがしてとても幸せです。私は毎朝、みそ汁とご飯を食べているから、かぜをひかないし、重い病気にもなりません。ママ、私をうんでくれてありがとう。自分の命は自分で守る。これがママとの約束です」
お母さんは、はなさんが1人でも生きていけるようにとみそ汁や料理の作り方を教えたのだそうです。はなさんはお母さんから受け継いだレシピでみそ汁を作り続けています。
一杯のみそ汁に、とても深い愛を感じます。

「にらの味噌汁」が生んだ
世界の粘菌学者・南方熊楠

粘菌研究の第一任者で民俗学者でもある紀伊和歌山生れの南方熊楠(みなかたくまぐす)をご存知でしょうか。一風変った学者で、粘菌の研究に没頭すると三日間位は徹夜をするそうで、そんな時の食事は縁側に吊るしてあるバナナを熟したものからもぎとって食べ、徹夜の常食は6個位のあんパンでしたが、それ以上に好きだったのは「にらの味噌汁」で、妻に毎日作らせていたそうです。
にらの味噌汁研究の合い間にわざわざ台所に来て「明日から味噌汁だけでいい」と言い出したら「本を買うぞ」という合図で、洋書を買うための倹約をするという意味だったそうですから、世界に誇る粘菌学者は「にらの味噌汁」から誕生したといってもいいですね。
1929年、昭和天皇へ粘菌のご進講をされた折、採取した粘菌をキャラメルの箱に入れて差し上げたエピソードもあり、天皇も予定の時間を延長して南方熊楠とお話をされたそうです。

本典:「作家のごちそう帖」大本泉著(平凡社)

味噌の力

東京農業大学・中西載慶(ことよし)名誉教授が「味噌ことはじめ」という文章で味噌の調理効果について「魚や肉の臭みを消す力、油分をやわらげる力、素材に旨みを付加する力、食材を長持ちさせる力など枚挙にいとまがありません。千年以上も日本人の食卓と健康を担いつづけてきた理由はここにあるのです。今なおその力は健康で更なる潜在能力と可能性を秘めています」(月刊食生活、Vol 109)と、説いておられます。
味噌を使った料理いま、発酵食品のチーズを同じ発酵食品の味噌に漬けることによって乳酸菌と酵素の働きで代謝を高める優れた効果とバランスを持った食品として注目を集めています。
フランス料理では新しい調味料として味噌が広がっていますし、パンや菓子にも使われていますし、“味噌ラーメン”は世界のメニューとして広がっています。
味噌の力は、まだまだ進化しそうですね。

味噌を詠む

こんな俳句に出会った事があります。
「味噌・醤油・塩・酢・あさつき・初鰹」
瀬戸正洋さんの句だそうですが、香りたちます。
多くの文人達も味噌に思いを入れた一節があり、暮らしを写し出しています。
味噌を詠む宮沢賢治の「雨ニモマケズ」では、「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲタベ」と書き、米と味噌と野菜があれば自分は生活を維持できると説いています。
美食家で文人でもある北大路魯山人は「世を捨てて山に入るとも味噌醤油酒の通い路なくてかなわじ」と詠み、どのような所に住もうとも、味噌醤油酒は不可欠と叫んでいます。
詩人・石川啄木は「一握の砂」で、「ある朝のかなしき夢のさめぎはに鼻に入り来し味噌を煮る香よ」と詠みました。誰もが記憶にとどめる台所で母が刻む包丁の音と味噌汁の香に目覚め、そこから一日が始まる暮らしの風景が蘇ります。懐かしい時間ですね。